ノウハウ

2014.10.17
    アウトソースのマネジメントできていますか? 第二回

    コンサルタント太田 達也

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    前回は業務をアウトソースする際に陥りやすい問題点についてご紹介しました。コストの正当性が見えにくい、改善が進まない、業者を変更できない、など問題にも様々なレベルのものがありますが、このような問題を解決するには“情報のガバナンス “情報のガバナンス”ということが1つの重要なポイントになります。
    情報のガバナンスというと少し分かりにくいと思いますが、簡単にいうと、本来自分に帰属するべき情報や知る権利がある情報について自分の意思で自由に見たりコントロールすることができる状態であることです。

    例えば、A さんは給料を自分の銀行口座で管理しており、残高や入出金記録などはWeb や通帳記載でいつでも自由に確認することができるとします。これは情報ガバナンスがある状態といえます。一方で B さんは、奥さんに財布を全て預けており、いくらあるのか何に使われているのかがおぼろげにしか分からず、聞いても教えてもらえません。これは情報ガバナンスがない状態です。
    あるとき、彼らが自分が稼いだお金をきちんと管理して無駄な支出を押さえようと思い立ったとします。A さんは、過去の入出金記録や手数料などを分析して、無駄な手数料を減らすために計画的にお金を引き出すようにしようとか、貯金するために一部を定期預金に切り替えよう、という改善策を自分の意思で決められます。

    一方で B さんは、 奥さんに聞いても何にいくら使っているのか、増えているのか減っているのかも分からないため、自分でコントロールできません。もしかしたら奥さんは家計のことを考えて夫が無駄遣いしないように最善のコントロールをしてくれているのかもしれませんが、自分で管理しようと決めた B さんにとっては情報が見えないことは奥さんに対する不信感にもつながりかねません。これが情報ガバナンスのあるなしの違いです。
    上記は少し単純化した例ですが、業務アウトソースする場合も同様のことが言えます。業者に対してサービスのアウトプットだけ求めた場合、サービス内容に満足している間は問題ないのですが、不満が発生したり改善が必要になったときには、情報ガバナンスなくしては業者をコントールできません。なぜなら、実際にどういう運び方をしたのか、各区間でいくらかかっているのか、などの情報を見ることも知ることもできなければ交渉を有利に進めることもできませんし、改善の糸口を見つけるのも難しいからです。つまり、業務プロセスはアウトソースしつつも、情報についてはガバナンスを持っておく 情報についてはガバナンスを持っておくことが非常に重要なのです。

    では、どうすれば情報ガバナンスを持てるのでしょうか。当然、業者の情報システムのデータを全て把握することなどは不可能なわけですので、データの対象や、コントロールのレベルにメリハリをつけて、いかに必要な情報だけコントロールできるかが重要になってきます。以下では、物流会社の情報ガバナンスを実践した事例の一部を用いて、メリハリを整理するアプローチをご紹介します。紙面の制約上、ここでは概要だけしか説明できませんが、何となくイメージだけでもつかんでいただければと思います。

    情報ガバナンスを確保するための方策としては、以下のようにいくつかのレベルに分けられます。

    情報ガバナンスのレベル
    Level 1 : パフォーマンスレポートの提出を契約にてコミットさせる
    Level 2 : 伝票やコスト明細の提出を契約にてコミットさせる
    Level 3 : 業者システムへのアクセス権を得る
    Level 4 : データを自社システムにI/Fする
    Level 5 : プロセスも含め自社管理下に戻す

    Level 1 : パフォーマンスレポートの提出を契約にてコミットさせる
    この中で最もハードルが低いのがレベル1のパフォーマンスレポートを提出させるというもので、内容の差こそあれ通常契約を結ぶ場合はこのレベルは普通に実施されていると思います。物流サービスであれば積載効率や倉庫生産性など、何らかの KPI を決めて報告させるのが一般的ですが、KPI だけだと結果しか分からないという点や数字の信憑性は業者に依存してしまうという点に、コントロールの限界があります。

    Level 2 : 伝票やコスト明細の提出を契約にてコミットさせる
    レベル2は、オープンブックという考え方に近いですが、集計データや KPI だけでなく、明細データも全てオープンにさせるというものです。明細データを全てチェックするには多くの工数がかかるため実際には毎回確認しないかもしれませんが、明細レベルでのデータ提出が求められるというプレッシャーが、いい加減なオペレーションやデータ管理に対する抑止力になります。

    Level 3 : 業者システムへのアクセス権を得る
    レベル2までは、契約上だけのガバナンスですが、レベル3からは実質的なガバナンスになります。レベル3は業者システムに直接自由にアクセスし、データを確認したりダウンロードできるような環境を用意する、もしくはそういうサービスを提供している業者を選ぶというものです。抑止力という意味ではレベル2とあまり変わりませんが、自分の意思で必要なデータにアクセスすることで改善機会の発見や検証が可能になります。

    Level 4 : データを自社システムに I/F する
    レベル4は、必要なデータを自社システム(BI ツールなど)に I/F し分析可能な状態にします。ある業務エリアをアウトソースすると、会社全体を可視化しようとしたときに、そこだけぽっかり穴が空いてしまって結局全体を把握できなくなるケースがあります。例えば、販売、生産、購買、会計のデータは一元管理されてリアルタイムで詳細分析ができるのに、物流費情報だけは業者からの月末レポートを受け取るまで分からないので、トータルコストの把握や対策の判断は結局月次でしかできないということが起こるのです。自社システムに物流実績やコスト情報をI/F することで、全体を可視化できるようになり、全体視点からの改善ポイントも見えるようになります。

    Level 5 : プロセスも含め自社管理下に戻す
    レベル5は少し特殊なケースだと思いますが、業者に過度に依存してしまっているケースなどでは検討が必要です。稀ですが、長年の依存関係の中で効率性を追求するあまりに、受注管理やマスタ管理など、本来自社で担うべき仕事も業者任せにしてしまっているケースがあります。そうすると今の業者に不満がでてきて業者を替えようと思っても影響範囲やリスクが大きすぎてなかなか手が付けられなくなります。さらにそういう状況に安泰した業者は危機意識が希
    薄になり改善活動が進みません。このような場合には、単に情報ガバナンスを確保するだけでは不十分で、受注管理やマスタ管理の業務そのものを自社の管理下に戻すことが必要になるかもしれません。

    以上のように、ここでは5段階に分けて情報ガバナンスの対応策を整理しましたが、高いレベルになるほど、丸投げではなく業者をきっちりマネジメントする能力や仕組みが必要となってく きっちりマネジメントする能力や仕組みが必要となってくるといえます。

    前回からのまとめになりますが、3PL などの業務アウトソースは自社リソース負担を減らし高品質サービスを実現するための優れた戦略ではありますが、コストが不透明、改善が進まない、業者が替えられない、などの問題に直面することもあります。これらのリスクを減らして業者とうまく付き合っていくためには、業務プロセスはアウトソースしつつも、情報についてはしっかりとガバナンスを持つ姿勢や仕組みが重要です。そのための取り組み例を少しだけご紹介してきましたが、皆さんの会社でアウトソースを検討される機会があれば参考にしていただければ幸いです。

    コンサルタント太田 達也

    1995年外資系パッケージベンダー入社。生産管理及び計画領域を軸としたコンサルタントとして、グローバルSCMの構築や生産計画プロセスの改善などで実績を残す。2007年マネジメント・プロセス・コンサルティング株式会社に入社、大手外食チェーンの差プラチェーン改革、流通小売企業の全社経営改革など、クライアント企業の一員となってプロジェクトをリードするスタイルで活動。