ノウハウ

2014.10.17
    コンサルティング現場での気付き~ERP 導入企業と未導入起業の違い

    コンサルタント太田 達也

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    ホームページにも記載していますが、弊社のコンサルタントは全員大手 ERP ベンダー出身です。
    そのため、ERP 導入済みの企業や導入を検討している企業がお客様としては多いのですが、もちろん ERP と全く縁のない企業で経営コンサルティングの仕事をさせていただくことも結構あります。ERP ベンダ時代には関わることのなかったそういうお客様が増えるにつれて、ERP 導入済みの企業と未導入の企業との違いが如実に分かるようになってきました。

    今回は実際にあったお客様とのやり取りを例に、その違いについて紹介したいと思います。

    【実例】購買部門の A さんが、ある業務の引継ぎを別の人に行うというので、私も同席させていただき話を聞かせていただきました。

    A さん:仕入れコストのレポートを毎月作成する必要があります。各拠点から提出される仕入れ実績を集計して、仕入先・品目ごとの仕入れ額と仕入れ原価をまとめてください。注意点としては、同じ仕入先でも時々違う仕入先コードになっていることがあるので、注意深くチェックして同じになるように直してください。

    私:ちょっと聞いてもいいですか。なぜ同じ仕入先なのに違うコードがあるのですか。

    A さん:同じ会社でもどの工場から仕入れるかによって仕入先コードを分けることがあるみたいです。また、既にコードが登録されていることに気づかずに発注者が新たにマスタ登録してしまうことなどもあるようです。ついでにいうと、仕入先については、各拠点担当によって仕入先名称の書き方が若干異なったり、営業窓口の名前が古いままだったりするので、レポート作成時にはそのチェックや修正も必要です。

    私:財務部でも同じような原価レポートを見せてもらったのですが、このレポートがその基になっているのでしょうか。

    A さん:財務とは原価の考え方が少し異なるので、財務用には別途計算したレポートを提出しています。これは購買部用のレポートです。

    私:購買部の人がレポートを見たいときはどうすればよいのですか。

    A さん:メールで問い合わせがくれば送ります。もしくは共有フォルダに入れておいて参照してもらうようにしています。

    私:それは大変そうですね。このレポート作成にどのくらい時間がかかっているのでしょうか。

    A さん: トータルするとまる 2 日分くらいは毎月費やしていると思います。

    さて、これはどちらの会社のケースでしょうか。お分かりだと思いますが、この例はERP を導入していないお客様との会話です(しかも結構な大手企業です)。少し極端な例ですが、ERP 導入済の企業との違いが如実に現れていると思います。

    まず、大きな違いは、マスタに対するシビアさです。ERP システムでは、マスタデータは全社共通で一元的に管理されるため、その登録・運用プロセスはシビアに管理され、自ずと誰もが登録や変更に慎重になります。マスタ登録に非常に神経を使い時間もかかり融通が利かない点は大変ではありますが、一度登録してしまえば誰もが最新の整合性のとれた情報を利用することができます。また、通常、商流と物流で必要な情報がきちんと構造化して管理できる仕組みになっているため、工場が違っても支払い先が同じであれば当然1つの仕入先コードとして管理ができます。名称や属性情報も1つのマスタデータから引っ張ってくるので、レポート側で打ち直したりする二重作業は発生しません。一方で ERP 未導入の企業では、その都度の都合や各部署の判断で比較的気軽に例外的なマスタを登録してしまったり採番ルールを変更してしまう(もしくはできてしまう)ことに対して違和感を持ったり問題意識を持っている人があまり多くありません。

    次に、情報の一元化に対する意識の違いです。ERP システムの世界では、事実は1つしかありません。ある品目の原価はある期間で1つしかありませんし、売上金額や在庫数量データも1つです。一方で ERP 未導入の企業はこの限りではありません。私は、ある企業で、原価情報だけでも何種類も存在しているのを見たことがあります。財務部が作る Excel の原価、購買部が作る Excel の原価、BI ツールに更新されている原価、など同じ品目についての原価情報があらゆるところに存在し、しかも少しずつ値が異なっている場合もあります。この会社のある担当者に聞いてみたことがあります。「こんなにいろいろな原価情報が存在していて、どれを正の情報として活用しているのですか?」それに対する答えは、「どれも中途半端で信用できないから、結局自分で必要なデータを集めてきて計算しています。」というものでした。一元化された“正”の情報がないという認識が広がると、各自が自分にとっての正の情報を作り始めて、さらに一元化が難しくなっているという状況は珍しくないように思います。

    その他にも色々と違いはあるのですが、このような違いが結局何につながるかというと、改革や改善のスピードや効果の差となって現れてきます。我々が様々な企業にお邪魔させていただいているのは、もちろんそこに経営課題がありその解決のお手伝いを求められているからなのですが、いろいろと実現したい施策やアイデアが出てくるのはどの企業も同じです。しかし、上記のようにマスタの整合性や情報の一元化に問題がある企業の場合、何をやろうとしても必ずそこで壁にぶつかります。例えば購買部門の企画として集中購買を検討しても、具体的に進めようとすると品目マスタの整備や仕入先マスタの名寄せから始めないといけないことが分かります。それらの作業は全社的な協力が必要になるし、そのこと自体が直接的な利益効果があるものでないことから、当然購買部門の一企画だけでは進められず、進められたとしても実際に集中購買を始められて効果を出せるのはずっと先のことになってしまいます。そうなると、やっぱりこの企画は期が熟すのを待って、とりあえず現状の枠組みの中で少しでもすぐに効果の出せる改善を始めよう、ということになってしまいます。

    このように我々のような外部の人間から見るとすぐに気づくような違いや課題点であっても、実際にその企業の中で働いているとなかなか気づかなかったり、深く追求する機会が少ないのではないでしょうか。もしくは、この類の話は具体的に数字に表れない、企業体質や情報管理レベルの問題であるということも課題が表面化しない理由かもしれません。

    ただ1つだけ言えるのは、ERP を導入した企業は多かれ少なかれこのような 少なかれこのような体質改善に迫られてきたわけです られてきたわけです。その経緯から気が付かなかった課題に取り組み、マスタの整合性や情報の一元化という壁を乗り越え、結果的に非常に大きなアドバンテージを持つことになったと思われます。つまり、ERP 導入企業は、他の企業があきらめている施策をよりスピーディに効果的に実現することができるステージに既に上っているのです。

    実はそのことにも気づいていない企業も意外と多いということも最近分かってきたのですが。。。

    コンサルタント太田 達也

    1995年外資系パッケージベンダー入社。生産管理及び計画領域を軸としたコンサルタントとして、グローバルSCMの構築や生産計画プロセスの改善などで実績を残す。2007年マネジメント・プロセス・コンサルティング株式会社に入社、大手外食チェーンの差プラチェーン改革、流通小売企業の全社経営改革など、クライアント企業の一員となってプロジェクトをリードするスタイルで活動。