ノウハウ

2014.10.17
    在庫適正化へ向けて(第2回)

    コンサルタント梅村 康一

    • Facebookでシェアする
    • Twitterでシェアする
    • LINEでシェアする
    • メールでシェアする

    このコラムでは、2 回に渡って、「在庫適正化」とはどのような状態か?「在庫適正な状態」にするには何を管理して、どのように進めていかなければならないか等をご紹介していきたいと思います。
    昨今「在庫の適正化プロジェクト」は、様々な会社で立ち上げられています。しかし、「在庫が適正な状態」がどのような状態なのか分からないままプロジェクトが進めてしまったり、プロジェクト自体どのように進めてよいか分からず、結局プロジェクトが頓挫し、思うような成果が得られなかったり、「在庫適正化」と「SCP ツール」導入プロジェクトを抱き合わせでプロジェクトを立ち上げたのに、最終的には「SCP ツール」導入だけが目的になってしまい、「SCP ツール」を導入したものの、何の効果も得られなかったといったケース等、「在庫適正化プロジェクト」がうまくいっていない場合が非常に多いようです。「在庫適正化」をどのように進めたら良いか悩んでいる人、「SCP ツール」の導入を検討している人、「SCP ツール」を導入したが思うような効果が得られてない人、そのような方々を対
    象に「在庫適正化のアプローチ」について、まとめてみました。また、前回・前々回に弊社コンサルタント太田より配信させて頂いた、「在庫適正化へのアプローチ-生販在(PSI)計画の意義 第 1 回・第 2 回」の続編という形で読んで頂いても結構です。皆様の「在庫適正化アプローチ」へ何らかのきっかけになれば幸いです。

    前回(第1回)のコラムでは、第二章:「在庫適正化の手順」のうち①制約に関する手順について説明してきました。今回(第2回)コラムでは、第二章:「在庫適正化の手順」の②サービスレベルから続きを説明していきたいと思います。

    第二章:「在庫適正化の手順」の続き

    ① サービスレベル
    I. サービスレベルを測定する KPI の定義
    意外と「サービスレベルを測定する KPI」は定義されていない会社は多いものです。読者の皆さんでも自分の会社の KPI が何であるかはっきり言える方は以外に少ないのではないでしょうか?この KPI は、「納期遵守率」等に代表される納期をどの位、守れているのかを表す非常に重要な指標になります。この KPI をまず決める事が非常に重要なのですが、ひとつだけ注意する点があります。この KPI は大きく分けて二つあります。ひとつは、「指定納期遵守率」、客先の指定した納期をどの位、守れているか測定する指標です。もうひとつは、「回答納期遵守率」、回答した納期をどの位守れているかを測定する指標です。ほぼ指定された納期に物を納めている会社であれば、「指定納期遵守率」を「サービスレベルを測定する KPI」として定義しても問題ないのですが、回答した納期を死守する事が重きを置く会社(業界)もあります。その場合は、「回答納期遵守率」を「サービスレベルを測定する KPI」として定義する事が重要になります。自社がどちらに当てはまるか良く注意して、「サービスレベルを測定する KPI」を定義してください。

    II. KPI によるサービスレベルの監視方法の確立
    「サービスレベルを測定する KPI」が定義されていない会社が多い理由は、監視方法が確立出来ていないからだと思います。受注に指定納期や回答納期が入力されていなかったり、そもそも入力項目が無かったり、納期に対する実績が比較できなかったりと監視方法が確立出来ない理由は様々ですが、現状のサービスレベルを監視できなければ、在庫が適正なのかどうかは判断できません。「納期遵守率」や「回答納期遵守率」といった KPI を日々のルーチン業務として監視出来るようになるには、意外と大変だと思いますが、是非チャレンジしてみてください。

    III. サービスレベルを測定する KPI の目標値の決定
    実績をこの KPI で監視できるようになったら、目標値を決定してください。あまり、現状値とかけ離れた目標値を設定しても達成目標にならないので現状値より少し良い目標値を掲げることを推奨します。

    ② 在庫量(バッファ量)
    I. 在庫レベルを測定する KPI の定義
    在庫レベルを測定する KPI を決定する上で重要なポイントが一つあります。そのポイントは、在庫を数量や金額といった絶対値で評価するのではなく、需要(出荷量)に応じて相対評価する KPI を使用する事が重要です。在庫量は、需要が多くなればなるほど多く必要だし、需要が少なければ少なくてすみます。ある製品の①1カ月の需要が 100 個で、在庫が 10 個の場合、②1 カ月の需要が 1000 個での在庫が 100個の場合、単純に②のケースの方を絶対評価を用いてで在庫は多いと判断してよいでしょうか?上記の場合、1 か月の稼働日が 20 日とすると、1 日当たりの出荷量は①の場合は 5 個、②の場合は 50 個です。①の在庫量も②の在庫量も、実は需要に対しては 2 日分と同等の在庫レベルとなります。このように、在庫が適正化どうかを測定するには、需要に応じて在庫を評価が可能な KPI を使用が必要になります。例として「在庫日数」や「在庫回転率」といった KPI があります。書籍やインターネット等でも簡単に調べられますので自社にあった「在庫レベルを測定する KPI」を定義してください。

    II. KPI による在庫レベルの監視方法の確立
    「在庫日数」や「在庫回転率」といった KPI が定義されたら、現状の在庫が決定された KPI で測定・監視できる仕組を確立する必要があります。最低でも月次サイクルで監視できる必要があります。なるべく自動化して簡単に監視できる仕組みを構築してください。

    III. 目標のサービスレベル確保のため、制約を吸収する在庫レベル(バッファ量)を適切に算出する方法論の確立
    この方法論は様々です。一般的に安全在庫算出の方法は数多く存在し、数多くの書籍が出版されています。また、インターネットからでも検索出来ます。方法論の説明は、それら他の書籍に譲ることとし本文書では割愛いたします。一概にどの方法論が正解というものが無いので、自社に合った方法論を是非見つけ出してください。さて、「バッファ在庫(安全在庫)によって、吸収すべき制約」ですが①制約の中で既に抽出済みです。下記にまとめます。どのバッファでどの制約を吸収するためなのか、もう一度整理してみて下さい。最終製品の安全在庫で吸収する制約は、営業部の制約(販売計画精度)と製造部の制約(生産確定期間)になります。ここでのポイントは、生産確定期間の外は需要変動に対応出来る期間なので、制約ではありません。ですから、最終製品の安全在庫量は、生産確定期間内の需要のブレを吸収する分だけ持たせることになります。
    部品の安全在庫で吸収する制約は、資材部の制約(部品の発注リードタイム+入庫~払出しまでのリードタイム)になります。部品のリードタイムは品目によって、違いますのでリードタイムが長ければ長い程、安全在庫を多めに持たなければならない傾向になります。
    部品の安全在庫を算出するのは、品目点数が膨大であるケースが多く非常に工数が掛かるので、算出方法の簡素化や自動化が求められる事も注意しておいてください。

    IV. 目標在庫レベルの決定
    バッファの定義で適正な安全在庫量を算出が出来たら、その安全在庫を確保するように、自社で使用する計画手法を用いて実際の計画立案をしてみます。安全在庫量と計画手法による制約を考慮した計画結果が得られるはずです。その計画結果で、例えば月末の理論在庫を「在庫レベルを測定する KPI」を算出してみれば、それが適性在庫になります。例えば、「在庫レベルを測定する KPI」に在庫日数を使用しているのであれば、目標在庫日数「30 日」といった具体的な数値で目標値を設定できます。現状の在庫レベルやサービスレベルを比較し、経営的な視点から判断し妥当と判断されれば、その適正在庫算出の考え方自体にも、経営的な視点での根拠を持たすことが出来ます。経営層への説明時に、その在庫算出の根拠等をいかに、明確に理路整然と説明出来るかがポイントとなるでしょう。
    何度か計画のサイクルを繰り返していくと、理論在庫がある程度の範囲内でばらついてくる時があります。その場合も、毎回目標値を変動させるのでは無く、決定した目標値を変えないようにしてください。例えば、クリスマスの時期は、需要が多く生産の平準化のため秋の 9 月・10 月頃から在庫を積んでいくようなケースがあります。そのような場合も、目標値はあくまで変えずの現状の在庫レベルが、イレギュラーな状態である事が監視出来るようにしてください。需要変動に連動して生産能力を増減させるのか、生産能力を平準化して需要に対応するのかは、大きな経営判断になります。平準化生産をするのは在庫のリスクを負う事にもなりますので、「経営判断が加えられたイレギュラーな状態」をレギュラーな状態との乖離値を示すことにより一目でわかるようにするのは、非常に重要な事です。

    第三章:「継続的な在庫適正化への活動」
    在庫適正化を保つために運用上必要なことは、以下の 3 点が保てている状態になります。
    ① 制約を考慮した、業務オペレーションが行われている状態。
    ② サービスレベルを測定する KPI の目標値が達成されている状態。
    ③ 目標となる在庫レベルのみを確保している状態。
    よって、在庫適正化の運用は①~③が適正にと保たれているかを常に監視する必要があります。監視するための手法や KPI は、第二章で決めた事を運用で実施するだけです。もし、上記①~③の状態が保てないケースが続いてしまう場合は、②・③の目標値が高すぎるからかもしれません。その場合は、②の目標となるサービスレベルを下げたり、③の目標となる在庫レベルを上げたりすれば①~③の状態を保てるようになります。ただ、②・③は、市場のニーズや経営的観点から簡単に目標値を下げる事は、出来ない場合がほとんどです。その場合においては、①の制約を徹底的に小さくする改善活動をしない限りは、「在庫適正化な状態」にはなりません。制約を小さくする改善活動は、非常に難しい事かもしれません。しかしながら第二章で記載した定義した内容を、きちんとこなしていれば、優先的に改善する制約が明確になって来ているはずです。ただ、やみくもに制約を改善していくのでは無く、優先的に改善する制約にリソースを集中し、期待効果を正しく測定しながら、改善活動を続ける事ができるようになっているはずです。それが、出来るようになっていれば、「在庫適正化」はすぐそこまで来ているものだと思います。
    また、①~③の状態が保たれていれば現状は、「在庫適正化」を実現出来ている事になります。ただ、この場合においても②の目標となるサービスレベルを上げたり、③の目標となる在庫レベルを下げる努力が必要です。そのためには、やはり優先的に改善する制約が明確になっていることにより「継続的な在庫適正化の活動」 「継続的な在庫適正化の活動」が続けられるものだと思います。
    最後に、在庫の適正化へのアプローチは非常に地道な作業かもしれませんが、順序だてて必要な内容をこなす事により、在庫の適正化を実現する事は可能です。現状在庫適正化を実現できている会社は、ほぼ例外なくこのようなアプローチをこなす事により実現してきているのだと思います。まずは、少しずつでも「在庫適正化へ向けて」継続的に活動を続けてみては、いかがでしょうか?

    コンサルタント梅村 康一

    電子部品生産管理部にて需給計画・需給調整業務に従事。2001年より外資系パッケージベンダにて製薬メーカーの需要計画需給計画業務の実現、自動車部品の生産計画プロセス改善などの実績を残す。2007年マネジメント・プロセス・コンサルティング株式会社に入社、設備施工会社のシステム構築、業務改革、周辺機器メーカーのグローバルSCMプロジェクトなど、顧客サイドに踏み込んだコンサルティング活動を実施。