今回は私が感じる企業の情報システムのあり方についてお話したいと思います。
我々は普段から製造業のコンサルティング支援をしています。情報システムの構築プロジェクトの話がたくさん持ち上がり、弊社としてそれを支援することが多くあります。
そこで感じることですが、情報システムの構築には大きな投資が必要になるわけですが、その結果何を達成させたいのかが曖昧であることです。
皆さんは情報システムが新しくなる、と聞いて何を連想しますか?
私がその昔製造メーカにいたこと、情報システムが新しくなると聞いたとき、以下のことを期待しました。
① いろいろな情報を出してくれる。
② インプットする情報が少なくなる。
③ インプット後、エンターを押してからその処理が終わるまでの時間が短くなる。
④ 使いやすい画面になる。色合いがよくなる
⑤ ほしい情報を検索しやすくなる。
おおよそこのくらいでした。もちろん私は当時1担当者に過ぎなかったので、目線は非常に作業的な部分にしか及んでいませんでしたが。
今現在はコンサルタントという立場で、これまでのいろいろな経験を生かしアドバイスできるようになりました。その観点で情報システムの価値を下記にあげて見ます。
情報システムの利用価値は大きく分けて2つに分類されると思います。
1.入力、処理、出力などの作業での活用
2.保存されているデータとしての活用
1ではたとえば、以下の利用価値が考えられます。
【作業標準化】
情報システムの構築では処理する流れ(手順またはプロセス)を設計します。この流れは構築後、いわゆる作業の(プロセスの)標準化を形成させることになります。
であるがゆえに、この設計されたプロセスが仮に、いろいろなケースに対応しすぎていると、逆に標準化が形成できないことにつながってゆきます。
たとえば、受注入力の際に、顧客からの注文番号を入れても、入れなくてもいいという設計であれば、受注の定義が大きく変わってくることがあるでしょう。
その意味で、業務プロセスの1局面(ここでいう受注入力)において
■ 何がきっかけで、
■ どのような情報をインプットして
■ その結果何をアウトプットするのか
■ またどこまでの情報がインプットされることで、そこから次のプロセスへ移ってよいのかなどを設計するところが重要になります。つまり、これら1つ1つを定義してゆくことで、誰がやっても同じ定義で仕事ができるようになることが標準化につながるのではないでしょうか。
2では情報システムの価値としてたとえば以下のことが考えられます。
【現状の把握】
私は製造業出身で、そのころよくボスに、“現場をみろ、そこに現状のすべてがある”などといわれました。つまり、百聞は一見にしかずですね。
しかし、現場に行ってもまだつかみきれないことは沢山あります。たとえば
■ 工場全体はどのような状態なのか
■ 計画に対して進捗状況はどうなっているのか
■ 今はいい状態なのか、悪い状態なのか
■ その判断のための基準はどのようなところにあるのか
情報システムを通して日々作業を行っていると、さまざまなデータを蓄積してくれます。
これらが上記の質問に答えてくれる大きな材料になるでしょう。
もちろん、無い情報は活用できません。ゆえに、繰り返しになりますが、1での設計が重要になるのです。
結果としてその時々で、現状を写真に取ることができるようになります。身近な周辺で起こっている事象を言葉で説明されるより、写真にとって見せられるほうが、説得力があり、また理解もしやすいことになるのは言うまでもありません。より複雑な企業の活動においてはこれがもっとも役に立つ根源になるはずです。
また判断基準を持つことで写真の中から問題だけを浮き彫りにさせることも可能です。
これについてはまた次回に触れることにしましょう。