ここ最近の内部統制に関する話題ですが、内部統制というと法規制の遵守や正しい決算報告などのイメージが強いですね。この2つどちらも根本的には、第三者に対して“法律をしっかり守っています”、“会計処理も正しく行っています”、としっかり“説明”できることを目的としています。さらに、もっと根本的な部分で言うと、内部統制とは、日常会社の中で行われている全ての業務に対して、管理者がその責任範囲の業務の全てに関して、しっかり説明できるかということになります。
例えば、購買関連部署の管理者の方は自分の部下の行った発注業務に対して、以下の質問にすぐに答えを出せるようでなければなりません。
1. 今日発注するすべてのものに対して
1-① なぜそれを買う必要があるのか?
1-② なぜ今日発注しなければならないのか?
1-③ なぜその数量なのか?
1-④ なぜその納期なのか?
1-⑤ なぜその金額なのか?
2. 発注済みの各取引に対して
2-① こちらの希望納期を満たしていない伝票はどれか?
2-② それらは他部署に影響はないのか?あるのであれば、連絡は出来ているのか?
2-③ 納期回答をもらえていないのはどの発注か?
2-④ 自社の生産などの変更によって発注内容(納期、数量など)を変更すべきものは無いと言い切れるか?
3. 本日入庫予定の発注に対して
3-① 朝、本日入庫予定の全てのものをリストアップできるか?
3-② 昼の時間に、午前中すでに入庫されているものはどれか確認できるか?
3-③ 夕方に、まだ入庫されていないものはどれか確認できるか?
3-④ その仕入先に本日問い合わせできるか?
購買課長や部長は当然自ら発注業務を行っていることはないかもしれません。
ここで大切なのは、部署内の誰が発注を行っても、上記の質問に管理職自ら答えを説明できるかどうかです。当然その担当者に聞けば分かるという答えはダメです。
これがしっかりした管理(内部統制)の基本です。
当然ながら、この質問に答えるためには、情報システムの力が必要ということは明らかでしょう。しかし、ただ情報システムが導入されているという事が、上記の質問に答えられるという事になるかと言えば、大きな疑問ですね。
例えば、上記の質問に答えるためには
1-① ~ 1-⑤に関して
生産部材(原料)であれば、
■ いつ生産が行われる予定で、何をどのくらい使用する予定
■ それらを購入するためにどのくらいの日数がかかる
■ 単価情報の情報を管理職が見えなくてはなりません。
2-① ~ 2―④に関して
■ 発注に対する納期回答取得方法
■ こちらの希望/先方の都合の情報の使い分け
■ 先方の都合が自社内で調整可能かどうかの判断情報
■ 自社内の計画変更と発注残の付け合せが可能でないと不可能です。
3-① ~ 3-④ に関して
■ 納期日付のこだわり(極端にいうと今月中ならいつでもいいなどはダメ)
■ 入庫実績情報の更新タイミング(今日の入庫実績は明日にならないと入力されないなどということへの問題意識)
■ 本日入るべきものが入らないということの重大性などの意識が無いと、答えることが出来ません。
このように、自分の部署の活動を説明するためには、部署内の情報だけでなく、全体の中での必要性を責任者が理解していることが不可欠です。サプライチェーンの観点でいうと、自分の部署の活動は、なんらかの後工程の活動が必要としている、などの説明がつくはずです。この説明が出来ないということは、何のために、今それをやっているのかが説明できない、大げさに言うと、大雑把に調達や生産をしているのでどこかに無駄を発生させていることになります。
これは細かく言えば、管理職の方以前に担当者本人が、自分の業務全般(過去に行ったことも含めて)説明できることから始まりますよ。
皆さんも自分の責任範囲で行われている業務を他人に客観的に説明できるかどうかを確認してみてください。たとえその業務が自分でやったものでなくても、責任範囲であるものはすべて説明が出来る状態を作り出すことが重要です。こ
れが出来なければ担当者のカン、コツ、ケイケンが蔓延し、統制が取れない状況になってゆきます。