ノウハウ

2014.10.17
    ERP の効果的な活用方法とは(第3回 ERP を導入すること自体が目的ではない)

    コンサルタント太田 達也

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    前回は、ERP パッケージの特徴についてご紹介しました。今回はこのトピックの最終回になりますが、このような特徴を活かしきれず ERP の導入効果が発揮できていない具体的な例をあげ、どのようなところに改善ポイントがあるのか探りたいと思います。

    ERP パッケージの特徴として、情報の一元性、リアルタイム、情報の正規化、ビジネスプロセスモデル、パッケージソフトウェアという特徴があることは前回ご紹介しました。

    ERP の導入効果がみられない企業の多くはこれらの特徴を活かしきれていないことが多く、ERP のなかにある整理整頓された情報の宝を使いこなせていないことが非常に多いと思います。
    例えば、以下のようなケースがありました。ERP では営業が入力した受注伝票情報が一元管理されているため、ERP 導入をきっかけに生産管理側も同じ情報をみて生産計画を立案するという新プロセスを開始しました。1 年経って生
    産管理の業務を確認してみると、実は ERP の受注情報は使わずに自分たちで別途生産計画を立てて運用していることが分かりました。
    理由は ERP に入っている受注納期情報が使いものにならないからだといいます。営業に確認してみると、受注伝票の「納期」項目に何の日付を入力するかが、担当や部門ごとにバラバラのルールになっていることが分かりました。A さんは確定受注をもらった時点での本当の要求納期を入力しているのに対し、B さんは自分の見込み納期を若干前倒しで入力したり、国内部門は客先着日を指定しているのに対し海外部門は生産希望日の意味合いで入力しているといった具合です。このため、生産管理はせっかく ERP にある情報を使わずに独自に計画をたて、営業はせっかく ERP に受注情報を入力したのに、また生産管理に電話で調整もしなくてはいけないという状況に陥っており、結果として ERP を導入して手間だけ増えたということになってしまいました。このケースでは営業の業務ルールを標準化するだけで、いままで宝の持ち腐れになっていた情報に一気に命が吹き込まれて、需給プロセス全体が格段に効率化します。

    上記は運用面での例ですが、システムデザインにも当然注意が必要です。ERP の標準プロセスが実際の業務プロセスに当てはまらない場合に、業務プロセスを何とか標準に合わせるか、追加開発をして現状の業務にあった仕組みを構築するかの判断に迫られます。追加開発はどのプロジェクトでも発生しうるものなのですが、ポイントは追加開発をするか否かの判断基準にあります。失敗するケースは、判断基準として工数や費用のみを考慮して決めてしまうパターンです。最も重要な判断基準は、その追加開発によって上記のような ERP の特徴が打ち消されてしまうことがないかというポイントです。
    例えば内示データを確定受注データで消しこむという処理が標準機能では要件に合わないので、追加開発を行ったとします。その処理単体でみればそれほど工数をかけずにいいものをつくれたとしても、それをやることによって、受注情報がリアルタイムで計画につながり、常に最新の在庫バランスを確認できるという ERP の特徴を完全に打ち消してしまいます。いくら在庫実績や生産実績をリアルタイムで更新しても、計画の側面からみるとその効果は片手落ちになってしまいます。

    これらの例からも分かるように、一部の業務ルールが標準化できていないことや局所的な改善だけを目的としたシステムデザインなどにより、ERP に集められた貴重な情報が効果的に結びつかなくなり、結果的に宝の持ち腐れになってしまうことがあります。そして導入効果を感じられない企業は、必ずどこかにこのような腫瘍があって、会社全体の情報の流れをせき止めてしまっているのです。

    ERP を効果的に活用するには?

    ERP の導入は単なる基幹システムの置換えではありません。その目的は、情報を整理整頓して管理し、入力する人も使う人も標準化されたルールに従って運用することによって業務全体の生産性を向上させることにあります。ERP パッケージの活用はその目的の上においては非常に優れた特徴を持っているのですが、せっかく導入してもその特徴を活かしきれていないがために、手間が増えた割りに導入効果をあまり感じられなくなっている企業が少なくありません。もしかしたら効果の発揮をせき止めているのはほんの一部の腫瘍かもしれないのに、それがあることによって情報の宝の山が活用されていないとしたら、非常にもったいないことだと思いませんか。
    ERP の導入完了によりプロジェクトを完了する企業が多いですが、プロジェクトを経験された方はお分かりのように短いプロジェクト期間中には期限までに導入することが第一優先になるため、必ず完全ではない部分が残ります。ERPの本当の効果を享受している企業は、ERP の導入をスタートと考え、土台作りをした上で継続的に改善プロジェクトをおこない、このような腫瘍をどんどん取り除いていっているのです。

    みなさんの会社がもし ERP を導入したのに効果を感じていないとしたら、宝の山に気づいていないだけかもしれません。もしかしたらほんの一部の改善で大きな効果が得られるかもしれませんよ。

    コンサルタント太田 達也

    1995年外資系パッケージベンダー入社。生産管理及び計画領域を軸としたコンサルタントとして、グローバルSCMの構築や生産計画プロセスの改善などで実績を残す。2007年マネジメント・プロセス・コンサルティング株式会社に入社、大手外食チェーンの差プラチェーン改革、流通小売企業の全社経営改革など、クライアント企業の一員となってプロジェクトをリードするスタイルで活動。