ノウハウ

2014.10.17
    製造業における物流管理~物流の情報化できていますか?~

    コンサルタント太田 達也

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    製造業の会社でお話を伺っていると、ほとんどの会社が製造原価の管理方法や低減活動には非常にこだわりを持っており、通常業務の中で常に問題を発見し、継続的に改善していく姿勢や仕組みを持っています。製造原価が分からないとか、適正原価との差異を把握していない、という会社は少ないのではないでしょうか。一方で、このような会社でも物流コストの管理方法についてお話を聞くと、意外とどんぶり勘定になっており、年間コストが去年より増えたか減ったか、というレベルの管理しか行なっていないところも中にはあります。もちろん、製造業なのでコアコンピタンスではない物流に多くの労力をかけないのは当然だと思いますが、絞りきった製造コストをさらに絞るよりも、多少労力を掛けて物流コストを絞るほうがコスト削減の機会点は多いように思えます。
    当然、このような話はどの経営者の方も考えていることではあると思います。しかし、実態として物流コストの把握や削減活動がなかなか進まないという会社も多いのではないでしょうか。生産でいうところの QC サークルによる現場からの改善活動や、標準原価を用いた原価差異分析を通じた改善施策にあたるような改善活動を“物流管理”業務として行なっている企業はまだまだ少ないと思います。なぜ、改善活動が進まないのでしょうか。その理由はいくつかあると思いますが、以下のような点が大きいのではないでしょうか。

    【物流改善活動が進まない理由】
    ・そもそも物流コストに関して、理論的に確立された管理手法を知らない。
    生産における製造原価管理のような一般化された方法論は、たしかに物流領域においては浸透していません。よって手本になるものがないために、手を付けにくいということがあるかもしれません。

    ・ 物流に関する情報化が進んでいない。
    製造業においては、たとえ基幹業務をシステム化しても、物流領域は情報化されていないことがほとんどです。
    理由は、物流機能がなくも今は困らないからというところでしょうか。例えば、情報システムがなくても現場の物流マンの能力で業務は回るし、物流費の支払いも請求されたとおりに支払うから問題にはならないというような理由です。このように情報化ができていないと、改善しようにも現実に何が起こっているか把握できないので問題を発見することすらできません。前年同月の物流費と比較して増えたか減ったかを知るくらいはできるかもしれませんが、その原因は突き止められず改善には繋がりません。

    ・物流費は“必要悪”というような意識がある。
    これは私の主観かもしれませんが、顧客に指定された納期は絶対に守らなければならないのだからそのために発生する物流費はしょうがないという意識から、何でそんなに物流費がかかったのか追求したり、もっと効率的な配送の仕方を追求することから意識が遠のいてしまうこともあるかもしれません。

    ・3PL に全部業務委託しているので、改善を主導しにくい。
    物流改革として3PL への業務委託を実現した会社が陥りやすいのがこのような状況です。3PL の活用は、物流部門を自社で抱えるよりは負担が少ないというメリットがあるのですが、その反面で物流活動は完全にブラックボックスになってしまうので、問題も見えず、また改善しようにも自社の統制範囲から外れてしまっているので何もできないということになります。結局、何となく腑に落ちないことがあっても毎月請求されるままの金額を支払うしかなくなってしまいます。

    しかし、このような理由から、改善活動に手を付けられないでいる、もしくはあきらめてしまっているのだとしたら、それはとてももったいないことかもしれません。簡単に始められることはいくらでもあります。

    【物流改善活動のためのヒント】
    まず、管理手法が発達していないという理由についてですが、実は物流についても確立された手法がないわけではないのです。例えば、「物流 ABC(活動基準原価計算)」という物流原価管理の手法があり、中小企業庁からもマニュアルなどが配賦されていたりします(http://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/buturyuu_ABC.htm)。
    しかし、そこまで難しいことをしなくても自社に合わせた「見える化」の仕組みを考えれば管理の仕方は自ずと見えてきます。見える化の進め方についてはここでは全て書ききれないのですが、例えば問題を見えるようにするということは簡単に言えば次のようになります。
    まず、「問題」とは、あるべき姿と現状とのギャップです。よって、例えば「物流費が去年より高い。」「A 地点から B 地点の平均物流単価は 20 円/kg もかかっていた。」という情報はただの事実であって問題とはいえません。それに対し、「A 地点から B 地点までの距離・物量からすると、物流単価は 10 円/kg が適正だが、先月の単価は 20 円/kg かかっていた」という状態を把握することは、問題を発見していることになり、具体的な改善策につながります。このように、予め“適正”な状態を定義しておき、それと実際とを比較することができれば問題の見える化ができることになります。問題を見るための切り口はいくらでも考えられます。例えば、配送ロット(通常単価の安い 20t車で運ぶはずが 10t車で運ばれていた)、出荷拠点(通常茨城倉庫から出荷するはずが、遠い名古屋倉庫から出荷されていた)などが考えられます。
    次に、問題を深堀りして、原因を追究していくと改善策が見えてきます。さきほどの問題の例でいうと、「B 地点周辺は出荷数量の少ない顧客が多く、単価の高い小ロットでの配送が多かったことが原因だった」という原因が追究できたとします。このとき、物流部内だけで対策を考えると、「営業から指定された日付・数量のとおり配送した結果だから仕方がない」という結論になってしまうかもしれません。しかし、サプライチェーン全体で考えたら、「営業が納期調整を行なって、同じ日に大ロットでまとめ配送できるようにしよう」という改善策が浮かび上がるかもしれません。

    また、3PL に業務委託している場合でも、問題の見える化が自社でできていれば、無駄を指摘することが可能になり、請求金額に対する交渉が可能になったり、業務改善を要求することが可能になります。しかし、業者によっては見える化に必要な明細データを提供してくれなかったり、改善要求に応えてくれないケースも多々あると思います。これに対しては、きちんとこちら側の要求を明文化し、必要があれば他の業者も交えてRFP を出すくらいのことを、労力を惜しまずに行えば必ず対応してくれるはずです。

    最後に、「問題を見えるようする」、「業者への交渉力を持つ」など、すべてに取り組みにおいて重要となるのが、物流の情報化です。どこから、どこまで、何を、どれだけ、どのような手段で、いつまでに、運ぶ予定なのか、実績はどうだったのか、配送費はいくらだったか、このような情報がシステムに入力されてはじめて問題を見つけ、改善策を検討したり交渉をすることができるようになるからです。日々の物流“オペレーション”ではこのような情報は紙や物流担当者の頭の中にあれば何とかなるかもしれませんが、物流を“マネージメント”するためには、情報は全て情報システムに入力されている必要があります。それを実際に実現するのは大変なことのですが、ERP の物流モジュールの使用を検討してみる、業者からの実績情報の EDI 化を検討してみる、といった取り組みから序所に始めることはできると思います。

    “物流管理”は手がつけにくい領域かもしれませんが、まずは、物流の情報化から始めていけば、少しずつ無駄が見えるようになるのではないでしょうか。

    コンサルタント太田 達也

    1995年外資系パッケージベンダー入社。生産管理及び計画領域を軸としたコンサルタントとして、グローバルSCMの構築や生産計画プロセスの改善などで実績を残す。2007年マネジメント・プロセス・コンサルティング株式会社に入社、大手外食チェーンの差プラチェーン改革、流通小売企業の全社経営改革など、クライアント企業の一員となってプロジェクトをリードするスタイルで活動。