ノウハウ

2014.10.17
    見える化戦略の具体例~在庫の見える化 第三回

    コンサルタント太田 達也

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    今回は見える化戦略のテーマの最終回になります。ここまでで、「見える化戦略」の4つのアプローチの内の 2 つ、「問題見える化」と「全体見える化」の話をしました。
    最終回では、「先行き見える化」と「見える化 JIT」という残り2つのアプローチを紹介し、これまでの話をベースに最終的にどのようにマネジメントプロセスが形作られていくか、一緒に見ていきたいと思います。

    3.先行き見える化
    問題見える化、全体見える化、これらは起こってしまった問題を発見したり、その原因を追及するためのものでした。しかし、本当は問題が起こらないに越したことはありません。問題が起こる前、つまりリスクの時点でそれを発見し、事前対応することで未然に防ぐことができれば、これに勝るオペレーションはありません。“先行き見える化”とは、この事前対応のために、現時点だけでなく将来期間の予定・計画情報も見える化し、できるだけ早くリスクを発見することです。在庫の見える化においては、10 日後に在庫基準を下回り 20 日後には欠品してしまうという欠品リスクや、今の生産計画のままだと過剰在庫をつくってしまうというリスクが見えることが重要です。しかもこれらのリスクは日々発生し、すぐに対処が必要なものばかりなので、いかに早く発見できるかということもまた重要になってきます。

    在庫の先行きを見るためには、現時点の在庫、販売予定、生産予定、将来の在庫推移、基準在庫などの情報をもとに先行き在庫バランス表をつくるのが一般的です。これには情報システムは不可欠です。在庫バランスに影響を及ぼす情報(受注、出荷、生産入庫、発注入庫など)が全て反映されており、しかもそれがリアルタイムに近いタイミングで更新されていないと、対応が遅れる可能性もあります。
    また、情報システムに求められる機能としては、リスクを通知するアラート機能が重要です。製品の点数にもよりますが、人がバランス表を 1 製品ずつ確認するのはほとんど不可能です。よって、事前にリスク発見のためのルールを決めて、アラート機能によってその条件に当てはまるものをリストアップし、優先度の高いものから対応していくという流れを、業務プロセスとして定着させることが必要になります。アラート条件の例としては、以下のようなものが考えられます。
    ・欠品が発生する
    ・安全在庫日数を下回る
    ・基準在庫日数をx日分上回る
    ・etc

    4.見える化 JIT
    在庫の見える化の最終ステップは“見える化 JIT”です。JIT(ジャスト・イン・タイム)なので、「必要ときに必要なものを必要なだけ」という発想です。問題の見える化、全体見える化、先行き見える化を実現するために、情報システムを活用してレポートやリストを作成する必要があることはこれまで説明したとおりですが、有効な管理プロセスを実現するためには、見るべき人が、見るべきときに、見るべき視点を持って、必要なレポートを見る(見ることができる ることができる)ようにすることが必要です。
    例えば、先行き在庫バランス表については、各製品グループの計画担当者が毎日チェックする必要があります。よって、このレポートには「製品グループ」や「担当者」という条件で表示される製品を絞り込む機能や、リアルタイムで情報が更新される機能が必要になります。計画担当者は、事前に決めた在庫基準をものさしにして、将来のリスクを発見し、事前対応的に処理していくという視点でこのレポートを活用することが重要です。
    また、起きてしまった問題を見るためのレポート(例えば、異常在庫レポートなど)は、マネージャーが全体について定期的にチェックし、原因追求的な視点で分析をするために活用することが重要です。そのためには、部下が作成した紙のレポートを原因と対策付きの報告とともにチェックしているだけでは不十分で、マネージャー自らが知りたいときにシステムにアクセスし、問題を見つけ、原因を追究することが必要です。そのためのマネージャー層の IT スキル強化も見える化 JIT の取り組みには含まれてきます。

    【見える化から管理プロセスへ】
    これまで三回のコラムをとおして、「問題見える化」「全体見える化」「先行き見える化」「見える化 JIT」からなる「見える化戦略」についてそれぞれ紹介してきました。それぞれ単体でも非常に重要なテーマでもあるのですが、これらを1つずつ実現し見える化 JIT まで進んでくると、結果的に全体として有効な管理プロセスの構築につながっていくことになります。
    これまでの在庫の見える化の手順を振り返ってみると、まず、会社の戦略を決め、それを反映した在庫基準をマスタとして設定しました。この在庫基準を問題をつかまえる網に例えるとすると、まず“先行き見える化”によって、各計画担当者が自分の担当範囲の網に引っかかってくるリスクをどんどんつぶしていきます。そこでつぶしきれなかったものが結果として過剰在庫や欠品という問題となって残るわけですが、これを後ろで構えていたマネージャーが“問題見える化”で拾い、“全体見える化”で原因を追究します。その結果、対策として、在庫基準を見直したり製品の戦略を切替えたりすることによって、より精緻な網に改善していくことができるようになります。このように、各自が見るべきものを見て自律的に対応できる仕組み、即ち「マネジメントプロセス」ができあがると、その会社はどんどん筋肉質になっていきます。

    今回は在庫の例をとって説明してきましたが、基本の考え方は原価管理や生産管理など他のテーマにも当てはまります。皆さんの会社でも、できるところから是非チャレンジしてみてください。

    コンサルタント太田 達也

    1995年外資系パッケージベンダー入社。生産管理及び計画領域を軸としたコンサルタントとして、グローバルSCMの構築や生産計画プロセスの改善などで実績を残す。2007年マネジメント・プロセス・コンサルティング株式会社に入社、大手外食チェーンの差プラチェーン改革、流通小売企業の全社経営改革など、クライアント企業の一員となってプロジェクトをリードするスタイルで活動。