ノウハウ

2014.10.17
    ERP の効果的な活用方法とは(第 1 回 ERP を導入すると仕事が増える?)

    コンサルタント太田 達也

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    ERP パッケージとは会社のあらゆる業務を行うために必要な情報を管理するためのソフトウェアです。様々な業種の様々な業務プロセスに対応した情報管理の仕組みが標準プロセスとして用意されていること、複数の異なる業務で入力された情報が一元管理できる仕組みであることなどがその特徴として挙げられます。十年程前から日本でもERP パッケージを基幹業務システムとして導入する会社が多くなってきましたが、それらの会社はなぜ巨額の投資をして ERP パッケージを導入するのでしょうか。あるいは導入したことによってどのような効果を挙げることができたのでしょうか。ERP を導入したことによって効果を上げることができたという企業もありますが、システムが使いづらくなった、オペレーションの負荷が増えた、導入する前よりも業務のパフォーマンスが落ちたという声もよく耳にします。果たして、ERP パッケージはどのように活用したら最も効果的なのでしょうか。

    今回から三回に渡って、ERP の効果的な活用方法についてご紹介していきます。

    「せっかくシステムを新しくしたのに以前より面倒くさい処理が増えた。」「仕事が増えた。」ERP システムを導入したお客様を訪問すると、時々こんな声を聞くことがあります。事実、ERP を導入すると仕事は増えます。何故高いシステムを入れたのに仕事が増えてしまうのでしょうか。

    先日たまたまテレビでやっていた映画でこんなシーンがありました。ある倒産寸前のスーパーがあります。バックヤードや事務所は在庫のダンボールが山積みにされ、人がスムーズにすれ違うこともできません。経営難で人手を減らしすぎた結果、在庫の管理までは手が回らずに、片付けることもできなければ、新鮮なものから店に出すこともできずにまた売れ残りがでてしまうという悪循環です。とうとう閉店の危機というときに、県庁から来た織田裕二とパートの女の子の柴咲コウが改革に乗り出して、最後には大改革に成功し売上倍増で危機を乗り越えハッピーエンドというストーリーです。(「県庁の星」という映画です。。。)

    このとき2人が思いついた改革案は以下のようなものです。

    棚を作って、山積みのダンボールを整理して収納し、誰でも何がどこにあるか分かるようにする。
    ・ 入庫してきた肉を倉庫に収納する際は伝票に必要な情報を記入し、1枚は肉に貼り付けもう1枚はファイルに閉じる。こうすることで古いものから順に使用できる。
    ・ 十字路に標識をつけて人が通るときの優先順などのルールを決めて混乱を防ぐ。

    ただでさえ手一杯の仕事を抱えているスーパーの従業員達はそんな手間のかかることはできないと最初は反対します。しかし、少しの手間をかけてみんながルールを守って作業をすることで、後で使う人が効率よく間違いなく仕事をすることができ、より新鮮なものを店頭にだせるようになるという説得によって全員がその目的を理解し、ルールを守って作業するようになりました。そして最後にはその策が上手く機能し、売上 No1店舗にまで成長しハッピーエンドというストーリーです。

    ここまで読んだ多くの方は、「何だそんな当たり前のことか、そんなことはウチの工場でももっときちんとできているよ」と思ったことでしょう。確かにある程度の業績を上げているほとんどの会社では、5S に始まり、上記のような「モノ」の管理やルールの徹底はキッチリとできていると思います。

    しかし「モノ」を「情報」に置き換えたらどうでしょうか。情報がキチンと整理され、いつでも誰でも必要なデータが取り出せるようになっているでしょうか。

    ・ 売上データは月末に集計するので、月中は各営業に聞いて回らないと進捗を把握できない。
    ・ 工場と生産予定が共有できていないので、とりあえず受注を押し込む。結局後で調整に時間をとられる。

    このようなことが思い当たる方は少なくないと思います。日本企業についての私の実感ですが、モノの管理については整理整頓が行き届き非常に精度の高い統制がとれているのに比べ、情報の整理整頓、統制がとれていないことがホワイトカラーの生産性の低さにつながっているような気がします。事実、日本の労働生産性は製造業だけに限るとアメリカについで第 2 位なのに、全体でみると先進 7 カ国中最下位、OECD 加盟国の中でも下のほうらしいです。

    ERP の目的の1つとしてこのような状況を打破して、生産性を向上させることにあります。つまり、「情報」についてだれでもどんな情報がどこにあるか分かるように整理した形で入力し、標準化されたルールに従って運用することにより、特に後工程の管理プロセスの効率化を格段に向上させることが目的です。先ほどのスーパーの例と同じく、少しの手間をかけることで後で情報を使う人の仕事が効率的に間違いないものなるのです。よって、ERP を導入することによって手間が増えるのは、その目的からするとある意味当たり前といえるかもしれません。

    社員一人一人が情報を整理整頓するという意識を持つことで、会社全体として飛躍的な生産性の向上につなげること、それが ERP の大きな目的の1つであり、その段階へステップアップするためには、今まで大して気にしてなかった業務処理にもひと手間かける必要があるということはご理解いただけたでしょうか。とはいいつつも、いくらなんでも手間がかかり過ぎる、手間をかけた分の効果が感じられないという ERP ユーザーの方もいらっしゃると思います。そのような会社ではもしかしたら ERP パッケージという情報システムの使い方が間違っているという可能性があります。

    次回は、ERP パッケージの特徴に焦点をあて、その正しい使い方を考えてみたいと思います。

    コンサルタント太田 達也

    1995年外資系パッケージベンダー入社。生産管理及び計画領域を軸としたコンサルタントとして、グローバルSCMの構築や生産計画プロセスの改善などで実績を残す。2007年マネジメント・プロセス・コンサルティング株式会社に入社、大手外食チェーンの差プラチェーン改革、流通小売企業の全社経営改革など、クライアント企業の一員となってプロジェクトをリードするスタイルで活動。