ノウハウ

2014.10.17
    ERP 導入企業のマネジメントプロセスの構築

    コンサルタント梅村 康一

    • Facebookでシェアする
    • Twitterでシェアする
    • LINEでシェアする
    • メールでシェアする

    第 1 回 なぜ、今マネジメントプロセス構築が必要なのか?

    まずは、業務を統制・管理するという観点から現在の ERP 導入企業を取巻く環境について書いて行きます。この企業の取巻く環境を理解する事により、『マネジメントプロセスの構築』の「重要性」と「なぜ、今マネジメントプロセス構築が必要なのか?」が明確になるものと思います。

    1.本質的な内部統制活動への軌道修正
    最近会社法・金融商品取引法の公布・施行に伴い、内部統制という言葉が盛んに使われています。実際の企業活動においても、この2つの法律対応のため多くの時間と工数をかけている会社が多いようです。しかし、現状の多くの企業が内部統制の本質的な理解を深める事なしにこの法律への表面的な対応にだけ追われ、パニック状態に陥ってしまっています。何の目的で作っているのか分からない大量な文書作成を業務担当者に強要し、結局何の役にも立たない文書を作成に膨大な時間とコストを掛けてはいないでしょうか?多くの担当者の方は、その文書を作る事自体が目的となってしまった活動に対して嫌気が差し、内部統制の本質的な活動への軌道修正の必要性を直感的に感じています。本来、内部統制とは会社法・金融商品取引法のような法令によって押し付けられるものでは無く、基本的な計画・実行・監視といった経営上の必要な管理手法であるべきです。この計画・実行・監視という『マネジメントプロセス』を構築していく活動こそ、本質的な内部統制システムを作りあげるという活動であると私は思います。

    2.ERP システムへの期待

    2000 年前後~2005 年に掛けて多くの大企業で、ERP システムの導入が進みました。尚、現在も導入を検討および導入のプロジェクトを走らせている多くの企業が存在します。導入検討~導入プロジェクト~システムサービスインまで 2~3 年を要するのが一般的ですが、2003 年頃導入を検討し始めた企業においても 2005~2006 年システムサービスインを迎え、導入後の混乱が収束し業務運用とシステム運用が安定稼動し始めている企業が多く見受けられるようになってきました。
    そのような中で経営者は、当然高額なライセンス料や導入プロジェクトのコストへの投資回収が求められます。一方それら企業は、稼動後 1 年以上が経過し ERP システムの中に蓄積された膨大な業務データが存在しています。レガシーシステムでは到底見えなかったデータがそこには存在している事を肌で感じ、何らかの期待を持った勘の良い担当者が現れ始めています。まだまだ、導入プロジェクトの苦労・安定稼動までの長い道のりから抜けきれず、反 ERP システムを唱える方も多いのは事実です。しかし 2~3年前まではあまり見受けられなかった、ERP システムが本来持つ統合基幹業務システムという側面でのポテンシャルへの期待を持った方が確実に増えているのもまた事実です。
    この投資のへ回収、ERP システムの持つポテンシャルへの期待を背景に、ERP システムの本質的運用方法をトップダウン・ボトムアップで議論し模索している企業が増えて来ています。しかし、その ERP の持つポテンシャルへの期待が漠然としすぎていて、そのポテンシャルをどうやって引き出せば良いのか分からない。またそれを相談出来る相手が見つからない。といった悩みを抱え ERP システム活用の次フェーズになかなか進めない企業が多いのも事実です。
    その悩みを解決するには、まずその漠然と抱かれた ERP の持つポテンシャルへの期待をはっきりさせていく必要があります。
    ERP の中に蓄積されたデータというのは、計画・実行(実績)されたデータが存在しています。例えば、「予算に対しての実績」「月次の計画に対しての実績」「出荷の予定日に対しての実際の出荷日付」等など、年次・月次・週次・日次というデータが存在しています。本来、業務を管理するという事はその予実比較を行い、目標(計画)と実績のブレを目標達成に向けて随時修正する事です。そのためには、対象業務、その管理者、その責任・権限の範囲、好ましくない事態への対応方法等、それぞれ役職やレイヤーに毎に事前に定義されていなければなりません。ERP の中には、管理対象のデータが蓄積されているにも関わらず、その管理プロセスが曖昧または、未定義・未整理のためERP の本来的な活用が出来ていないのが現状ではないでしょうか?
    つまり ERP への漠然とした期待は、ERP システムで業務の運用は出来るようになり、「オペレーションシステム 「オペレーションシステム」として機能を果たすようなった企業が、ERP システムを「マネジメントシステム」として昇華させる事への期待だと思います。逆説的な言い方をすると、ERP システムは、「マネジメントシステム」として活用することにより初めて、その効果が現れるという事です。システムをマネジメントシステムとして活用するには、『マネジメントプロセス』というプロセスを明確に定義し、システムへ反映させていく作業を経て初めて、システムを「マネジメントシステム」として活用し『マネジメントプロセス』を運用できるのだと思います。ERP システムが、「オペレーションシステム」として機能はしても「マネジメントシステム」として機能しない理由は、様々ですが下記に一例を挙げてみます。
    ① マネジメント層が ERP システム導入プロジェクトに積極的に参画しなかった。
    ② ERP システム導入プロジェクトでは、「オペレーションシステム」構築が精一杯であった。
    ③ レガシーシステムでは、見えなかった事象が ERP システム導入により見えるようになったが、その事象をきちんと直視出来ていない。
    ④ マネジメントに必要なデータの項目が、正しく入力されていない。
    ・ ・・・等々
    理由を挙げればきりがありません。しかしシステム導入プロジェクトでは、予算・時間・リソース限られた制約の中でシステムが業務運用に耐えうるまでに持って行かなければなりません。その中で、ERP システムを「マネジメントシステム」までに昇華させるのは、実際には限界があります。ERP システムが「オペレーションシステムとして機能しない」一番の理由は ERP 導入後の「評価・改善活動」を具体的に企画・実行しない事にある思います。実際に ERP システムを運用し、運用面での定着が進んだら「マネジメントプロセスの構築」を「評価・改善プロジェクト」の目標としたプロジェクトを企画・実行する事が有効だと思います。

    第 1 回目は「本質的な内部統制活動への軌道修正」と「ERP システムへの期待」を背景に『なぜ、今マネジメントプロセスの構築が必要なのか』を書いてみました。次回は、実際に『マネジメントプロセスの構築』手順について書いていきたいと思っています。

    コンサルタント梅村 康一

    電子部品生産管理部にて需給計画・需給調整業務に従事。2001年より外資系パッケージベンダにて製薬メーカーの需要計画需給計画業務の実現、自動車部品の生産計画プロセス改善などの実績を残す。2007年マネジメント・プロセス・コンサルティング株式会社に入社、設備施工会社のシステム構築、業務改革、周辺機器メーカーのグローバルSCMプロジェクトなど、顧客サイドに踏み込んだコンサルティング活動を実施。